廊下・階段

☆今回は生活する上で常に利用する廊下・階段について取り上げてみます。

①廊下・階段の有効幅員

・日本の住宅は現在、建築における設計上の基準となる基本寸法をメートル法と定めております。メートル法
 定められる前は、尺貫法を用いておりました。

・長さや広さ、容積、重さなどの単位比は「度量換算表」で求めることが出来ます。

★長さの単位比★

尺(しゃく) 間(けん) 里(り) メートル
1 0.166664 0.000077 0.30303
6 1 0.000462 1.81820
12,960.1 2,160.00 1 3,927.30
3.3 0.54 0.000254 1
0.083820 0.013969 0.000006 0.0254
1.00584 0.167638 0.000077 0.3048

 

・「尺」「間」「里」が実際普段使っている「メートル」で換算するとどれくらいの長さになるのか?とは
 ピンときませんが、結構「尺、間、里」は聞いたことがあると思います。
 例えば「尺」は脚立の長さで普通に使います。「3尺の脚立」や「4尺の脚立」などです。
 この場合は1尺が0.3030メートル、つまり30.3cmということになるので、「3尺の脚立」というと約90cm
 の高さということになります。尺の1/10が寸になります。一寸法師は1尺(30.3cm)の1/10なので、
 約3cmということになります。

・「里」は昔のアニメで「母を訪ねて三千里」がありましたが、マルコはお母さんを探しに三千里旅したと
 いうことですね。1里を約4kmとすると、約12,000Kmになります。日本の最北端(択捉島)から最南端
 (沖ノ鳥島)まで2,787km、最西端(与那国島)から最東端(南鳥島)まで3,146kmあります。子供の
 マルコはこの距離の約4倍旅したのです。すごいですね。自分は最北端から最南端までの距離を歩いて母を
 探して旅する自信がありません・・・(大人なのに)。

・国際単位系(SI)というものがあり、SIはいくつかに分かれて構成されています。その構成の中で
 「基本単位」があります。長さは「メートル」質量は「キログラム」時間は「秒」電流は「アンペア」
 熱力学温度は「ケルビン」物質量は「モル」光度は「カンデラ」と7つあり、諸分野で共通に使用できるよう
 構成されています。

※尺貫法は長さ、面積、体積、重量における日本古来の単位なので、昔ながらの建物はこの尺貫法を用いて
 造られています。そして現在の建築の世界でも使われている言葉です。

☆日本家屋の一般的な廊下の幅

・柱や壁の芯(中心)~芯の長さは910mmが一般的です。1間は1,820mmなので半間が910mmになります。
 この柱のサイズが105mm角として、柱の内側~内側の長さは805mmです。柱を隠すために12.5mmの厚さの
 ボードもしくはベニヤ板(合板)を貼ると、壁面~壁面の長さは780mmとなります。

780mmの有効幅員は自立歩行や介助用車いす、自走用車いすで直線に移動するのであれば、問題ない幅と
 なりますが、介護を必要とした歩行や、車いすを自力で動かす自走用車いすで廊下から室内に入るには
 狭いのです。車いすで廊下から室内に入る開口部の有効幅員は950mm以上必要となります。廊下に手すりを
 取付けるとなると、更に狭くなってしまいます

★廊下や階段の福祉住環境の整備を考えるうえで大切なことは、通行幅を確保することになります。

 

☆必要な幅やスペースを確保する2つの方法。

1.壁・柱を取り外す方法。

・壁や柱を取り外してスペースを確保するという考え方は、非常に慎重に行わなければいけません。まず、
 自宅の木造住宅の構造がどういう工法で建てられているかを一番に考えなければいけません。
 理由は建物自体の構造により、その建物が支えられているからです。

・日本国内の住宅の現状は、新設住宅着工の約55%、戸建てでは89%が木造です。既に建てられている戸建て
 では約92%が木造です。つまり全戸建住宅の92%が木造住宅になります。

★木造軸組工法(在来工法)

・軸組工法は伝統的な構法を原型としています。柱、梁などによる軸組を基本として、鉛直(垂直)荷重は
 軸組(柱や梁)で負担し、水平荷重(風圧や地震)に対しては、筋交いや構造用合板などの面材を耐力壁として
 活用しております。

※この工法で建てられている住宅の柱は当然無くすことは出来ませんが、構造上問題のない柱であればなくすこと
 は可能です。とても限られた内容であり、当然構造上問題がないかは事前に検討する必要があります。

※この工法で壁を取り外すことは結構できます。壁自体が構造としての強度として存在しているのでなく、
 部屋を仕切る役割をしているからです。

★木造枠組壁工法(ツーバイ・フォー)

・枠組壁工法は、北米で発達した工法です。2インチ×4インチの枠材を釘打ちした枠組に構造用合板を貼り
 壁全体で水平、垂直荷重を受け持つ工法です。

※この工法で建てられている住宅の壁を無くすことは非常に難しくなります。壁自体が軸組工法でいう柱や梁の
 役目を果たし、家全体を支えているからです。開口部を大きくするということも、強度が失われる可能性を
 抱えています。

まず、第一に考えることは、柱や壁を取り外しても構造上問題がないか?建物の強度が弱くならないか?を十分に
検討しなければいけません。

・福祉住環境を考えるうえで、検討する内容です。部分的なスペースを確保することで、介護や移動の十分な
 スペースを確保することを目的としています。そのため、メリット、デメリットは存在します。
 例えば、壁を無くすことでスペースを確保できるメリットがあり、部屋を仕切る壁がないため見渡せてしまう、
 音が筒抜けになるという、プライバシー的な問題のデメリットです。そういう面も十分に検討しないと
 いけません。
 

2.モジュールをずらす方法

・新築や大規模改修に適した方法です。モジュールをずらす、つまりモジュールを変更するということです。
 モジュールとは基本単位のことで、建築の世界では尺貫法が使われているので、多くの建築資材が尺貫法の
 寸法で作られています。半間910mm(正確には909mm)1間1,820mm(正確には1,818mm)
 一般的なので、例えば量販店でボードやベニヤ板(合板)を1枚購入すると縦1,820mm、横910mmのサイズ
 になるのです。

・モジュール(基本単位)を変更するということは、材料に無駄が出てしまう可能性が高くなります。
 910mmのモジュールメーターモジュール1,000mmに変更することで、その幅は90mm(9cm)広く
 なりますが、一般的に作られている資材の幅は910mmなので、90mm足りなくなるということです。

・モジュールを変更する事により、スペースを広く確保することで、高齢者や障害者が使用する部屋や寝室
 居間等を結ぶ廊下が広くなり、移動や介護に関してとても良い状態を作ることが可能になります。手すりを
 付けても十分なスペースを確保することが出来ます。

※無駄な材料や工事の手間、時間等を十分に検討しなければいけない内容です。


②廊下・階段の手すり

・現行の建築基準法施行令では、階段に手すり設置の義務規定があります。しかし、一般の手すり(それ以外)
 については詳しい記述がなく、わずかに記載されているだけです。そのため、階段手すりだけでなく手すり全般
 においていろいろな解釈や取扱いがされているのが現状です。

・今から30年前に建てられた実家の木造住宅は、廊下・階段には手すりは付いていませんでした。高齢の母が
 2階に上がることはほとんどありませんが、それでも上がることはありますので、階段と玄関と浴室に手すり
 を設置しました。

・高齢者のために階段に手すりが必要と思われがちですが、年齢に関係なく階段から落ちる可能性は誰にでも
 起こります。その小さな危険から大きなケガにつながらない為に手すりを設置する考え方は非常に大切だと
 思います。滑った時に手すりを掴むのではなく、手すりを使って階段を昇り降りする習慣が身につくことで、
 安全を確保することが出来るのです。

・高齢者に限っては、手すりの高さは重要です。また出来るだけ連続させるように取り付けること、ドアの開閉部
 などでと切れる場合でも極力最小限にするようにします。また出入り口付近には縦手すりを設置すると、
 扉の開閉時に姿勢を安定させたり、体を預けるなどの動作がしやすくなります。

・階段の手すりは両側に設置するのが望ましいですが、住宅の階段の幅は狭いので、片側設置が一般的です。
 その場合は階段を降りる時の利き手側に手すりを設置するのが望ましいです。階段は昇りより、降りる時の
 転落等が圧倒的に多いのです。

※手すりについての詳しい内容は住環境のページ内にある「手すりの必要性と種類、取付方法」を参考に
 していただけたらと思います。
 

③廊下・階段の仕上げ方

・歩行時に転倒することがないように、床材は滑りにくい仕上げにします。膝関節に負担を与えたくないような
 弾力性のある床材を使用すると良いでしょう。また、杖を使用しての歩行の場合は、杖が床面にあたる音を
 吸収して軽減させる床材や、タイルカーペットなどで仕上げるのも良いと思います。
 ただし、毛足の長いじゅうたんなどはつま先や杖先をひっかけて、転倒させる危険性もあるので、そういう
 材料は避けるようにします。

・また階段には、段鼻部分に薄手のゴム製のノンスリップを設置する方法や、塗装により滑り止めをする方法も
 あります。つまづき防止のため、出来るだけ厚みを出さないようにすることが大切です。

・滑り止め等を設置する際は、実物を確認して、対象者に合っているかを確認する必要があります。

まとめ

車いすでの生活や介護が必要な状況になると、今までの生活空間では困難な状況が生まれることがわかります。
広さの確保と手すりの重要性を十分に検討する必要があります。しかし、すぐにできること、簡単なことでは
ないこともわかります。それぞれのお住いの状況や生活状態、御身体の状態などさまざまな問題を一緒に考え
最適な生活を送れるご提案ができればと思います。介護保険を使える内容も多々ありますので、お困りの際は
是非弊社に御相談していただきたいです。